企業における兼業・副業の許可制導入時の注意点

人事労務

副業解禁に向けた世の中の流れを受け当社でも副業・兼業を認める方向で検討することになりました。どのような内容にすればよいか教えてください。

個社ごとに色々あると思いますが、許可制にすることをお勧めします。その際の運用上の注意点と合わせて下記で説明いたします。

1 推奨する副業・兼業に関する制度の概要

会社の副業・兼業に対する会社の選択肢を大きく分けると下記の4つです。
①全面禁止
②許可制(一部容認・一部禁止)
③届出制(届出により全面的に容認)
④全面容認(放任)

ではこの4つの中でどれを選択するのが会社にとってよいのでしょうか。
基本的な発想として、第3章で述べたようなリスクを回避またはコントロールできる体制が会社にとっても従業員にとっても良い制度であると考えております。
これは言い換えると副業・兼業をしている従業員から副業・兼業に関する情報をきちんと取得できかつ問題点を把握したら会社が従業員にコミットできる体制の整備であり、この発想に即したものは定期更新の許可制(②)であると考えております。その理由は以下になります。

①許可制度とすることで、副業・兼業をする従業員はその開始にあたり会社に申請をしなければならなくなりますので、会社に情報を提供します。
そして許可制であることによって、許可・不許可の審査のために誓約書の提出を求めることができますし、問題があった/生じた際にその是正を求めることができるようになります。
報告だけすれば足りるという届出制にしてしまうと情報は取得できても、是正のためのコミットが難しくなってしまう点で許可制の方が優れていると考えています。
②副業・兼業の状況は変わることが多く、それをキャッチするためです。
変化が生じたら都度報告するような規定を設けるという手段もあるのですが、どの程度の変化で報告義務が必要なのかの判断が難しかったり、そもそも面倒であるとして結局規定自体が機能しないということになりかねません。
そのため、半期に1回か年に1回等一定のスパンを設け手更新申請を必要にすることによる情報フォローの方をお奨めします。

2 定期更新の許可制の詳細と導入手順

(1)許可基準の設計

まず、重要となりますがどのような基準で許可・不許可の判断をするかという点です。
判断における考慮要素としては以下に記載する各事由が考えられますがこれらを考慮して最終的に拒否を判断する基準をできる範囲で具体化することになります。

  • 本業の労務提供上の支障のおそれ
  • 情報漏洩のおそれ
  • 名誉毀損・信頼破壊のおそれ
  • 競業避止義務違反のおそれ
  • 従業員の健康への悪影響のおそれ

基準自体が不当なものになりますとこれに基づく会社の措置も不当なものとなりかねませんので、この点は会社の企業理念等も考慮しきちんと設計されることが求められます。
例えば、副業・兼業にかかる工数(作業時間)の上限を定める、副業ないし副業先の業種や企業名を定める、必要情報の提出・不提出といったように項目毎の基準を定めどうなると許可・不許可と判断されるかといった基準を設計しましょう。

(2)申請手続きの整備

許可制度が適切にワークするためには、申請手続きを整備する必要があります。
就業規則に副業・兼業が許可制であり申請が必要である旨の規定を設け、申請の書式を整えた上、従業員に周知をしましょう。
申請書を提出してもらう目的は、副業・兼業自体のリスクを把握することですので、申請書の記載項目には下記のような内容を盛り込むのがよいでしょう。

  • 兼業先の情報(企業名・所在その事業内容等。なお、他社で働くのではなく自ら事業をするのであればその旨と事業内容)
  • 兼業先での業務内容
  • 兼業にかける時間や兼業期間、頻度。
  • 兼業をする理由

(3)誓約書の提出

誓約書を提出してもらう目的は、副業・兼業により会社に害を与えないことを誓約してもらうことを通じ、それを予防すると同時に問題発生時に是正要請や是正されない場合に許可取消ができるようにするためです。
各種リスクに対応できるように下記のような内容を誓約してもらうのがよいでしょう。

  • 申請書の記載に偽りがないこと、また記載内容に変更が生じたら速やかに報告すること
  • 副業・兼業にあたり会社の情報を開示・漏洩しないこと
  • 過重労働とならないように自ら健康の管理・維持に努めること
  • 健康被害が生じた場合に副業・兼業を中断すること
  • 誓約書に違反した場合、許可が取り消されること

(4)制度の周知

どんなに素晴らしい制度が作られたとしても、その制度の存在を知られなければ制度はワークしません。従業員が当該制度を認識し利用するように周知と啓発をしていく必要があります。
イントラネットに広報ページを作成する、社内メールで全社員にメールする等、自社に適した方法で根気強く従業員広報を継続していきましょう。

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