当社は上場を考えておりリスクを洗い出すために労務DDを行うことになりました。
どのような流れで進めていけばよいでしょうか。
まずは社内で重点的に注意したいリスク内容について方向性を決めましょう。未払賃金や過重労働、違法残業(36協定)違反といった点がハイリスク項目になりますのでこのあたりに着目されることが多いでしょう。
また社内の人だけでするのではなく、外部の社労士さんの力を借りることも多いでしょうから、対応いただく先生を探し決めることも必要になります。先生が決まったら、調査対応をしDDレポートをもらい今後の対応方針を決めていきましょう。
では、以下でもう少し詳細にお話します。
1労務DDのプランニング
まずは、計画を立てることから始まります。DDの目的がなんであるのかを明確にしたうえで、社内のDD担当と社労士さんで相談しながら、下記の事項等をクリアにして労務DD実行の道筋をクリアにしていきます。
・重点的な調査事項の決定
・データルームの検討
・スケジュール etc
なお、重点的な調査事項については別の記事でまとめます。
2キックオフ
労務DDは労務DDだけが行われるわけでなく、M&AやIPOに向けて行われる様々なDDの中のひとつとして行われる場合が多く、その場合他のDDと足並みをそろえながら進めていく必要があります。
そのため、DDの実施に入る前に、顔合わせ・DDのゴール確認・スケジュール共有等を目的としてキックオフを行う場合が少なくありません。特にIPOに向けた内部のDDでなく、M&Aの相手方調査のためのDDの場合、DD対象の企業内でのルールやス参加者のスケジュールの関係で混乱が生じやすいのでキックオフは大変重要になります。
3必要資料の準備
DDの調査範囲や規模にもよりますものの、基本的に労務DDには就業規則等雇用関係規定類、労使協定、雇用契約書、賃金台帳、出退勤管理表、労使紛争に関する資料等膨大な資料に当たる必要があります。
そのため、DDを受ける企業は社労士等から膨大な資料の準備をお願いされますので、その準備をまず行うことになります。具体的には、依頼をされた資料をデータルーム等に置くということになります。規模によって変わるものの、依頼を受けてから1~2週間はかかるでしょう。
4担当者による調査
資料が整ったら、DDの中心的作業の一つである調査・リサーチに入ります。まずは重点調査事項において問題がないかという観点から、用意された資料に当たっていきます。確認の過程で不明点や記載が不足している点があれば追加の資料をお願いすることになります。
また、不明点をクリアにすること等のため、役員や人事労務担当者等にインタビューやヒアリングをすることも行われます。
DDに当たり関係者の時間を拘束し通常業務を止めてしまうという点もあり、調査期間はあまり長くとれないことが多いです。長くても2週間程度、短いと数日ということも少なくありません。DD担当者と社労士さんはこの間忙しい日を送ることになります。
5分析・レポート作成
調査が済めば、その結果を分析し労務DDについて意見を述べるレポートの作成に入ることになります。先の調査とこの分析の質がDD結果の質に直結しますので重要になります。このレポート作成には1~2週間ほどを見ておくことが多いでしょう。
6中間報告
レポート提出において、いきなり最終レポートの提出ではなく、おおよその分析ができた時点で内部で中間報告を行うこともあります。この場合、社労士先生から見通しを聞くとともに前提となる事実の認識について齟齬がないか、追加調査が必要なものがあるかといった点をすり合わせることになります。
7追加調査・分析、レポート完成
必要な追加調査があれば実施し分析がされ、それも踏まえて最終的にDDレポートが完成されます。
8最終報告
レポートが完成しましたらその内容について報告がされます。レポートの内容を会社(DD依頼者)が理解することを目的に、レポート内容の概要の説明やそれに関する質疑応答がされます。
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