法務担当になったばかりの者で、まずは契約書を見ることができるようになろうと上司から言われました。レビューの際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
そうなのですね。慣れるまでは大変かもしれませんが頑張ってください。
色々な点がありますが、まずは共通して意識しておいた方がよい点について説明しますね。
1 契約書の機能
契約書を作成する目的は、主として以下の4つの機能を期待してのものになります。
①明確化
②証拠
③特約
④リスク回避・転嫁・シェア
4つの機能について概要を説明しましょう。
①明確化
合意内容がそれを文字にして書面化することで明確になります。
明確化することで、隠れた思い違いを減らし後日の紛争リスクの軽減につながります。
②証拠
口頭での合意だけでは、当事者が内容を忘れてしまった場合に確認方法がなくなりますし、後日紛争化した際には言った・言わないの水掛け論になってしまいます。
書面にして証拠を残すことで、紛争の予防と紛争になった際の拠り所の確保が期待できます。
③特約
契約書がなくとも取引形態によっては民法等の民事や関連する裁判例によって権利義務が定まる場合があります。
しかしながら、それだけではフォローできない部分や民法等と異なる合意をすることが当事者間にとって合理的な場合がありますので、契約書で特約として定めておくことが必要となります。
④リスク回避・転嫁・シェア
取引において順調にいかない場合も時として起こります。そのため、大きなリスク発生に備えて当該リスクに対しどう向き合うかを両当事者で事前に合意しておくことが望ましいでしょう。
その前提として、予測しうるリスクがなんであるかを想定し、想定したリスクについて評価しておくことが重要になります。
2 契約書レビュー
(1)レビュー時におけるチェック視点
契約書レビューにおいて、下記の点は契約の類型に関わらず確認しておく必要があります。
①契約書内の用語などについて不明点を確認する
②関係する法令や判例を調査する
③自社にとって不利な条項や抜け漏れがないかをチェックする
④一方にとってあまりに不利な契約となっていないかをチェックする
⑤関連する契約書との整合性をチェックする
⑥想定されるトラブルをフォローできているかチェックする
⑦自社の目的や取引の実態に即した内容かチェックする
以下でそれぞれの概要を説明しましょう。
①契約書内の用語などについて不明点を確認する
契約書の言葉が明確でないと、当事者間の合意の内容がずれてしまう可能性があります。
一義的に解釈できるものか、用語や文言について確認しておきましょう。
②関係する法令や判例を調査する
契約条項に記載されていない事項については、法令や判例に従った処理が行われます。
また、契約書がない場合には法令上どのように処理されるかを把握することで、当該条項が自社にとって有利か不利か、両当事者で条項調整が発生した場合の落としどころはどのあたりかを押さえることができます。
③自社にとって不利な条項や抜け漏れがないかをチェックする
基本的に相手方から提示される契約書ひな形は、相手方に有利な条項が多く含まれています。そこで、一方的に相手方に有利な条項を確認し、必要に応じて修正または削除して、自社に有利または双方にフェアなものにすることを心がけます。
④一方にとってあまりに不利な契約となっていないかをチェックする
自社にとって不利でないか注意するのは当然ではあるのですが、あまりにも相手に不利益を課してないかという点にも注意が必要です。
相手の不信感を生む、交渉工数が増えるといった事実上のリスクもありますが、それ以上に公序良俗違反等で条項自体が無効となりかねないためです。To C契約の場合は消費者契約法等がありますので特に注意が必要です。
⑤関連する契約書との整合性をチェックする
関連する契約書と矛盾した内容の契約書を締結したり、過去の契約変更などを見落としたまま契約書を締結したりすると、業務に支障が生じることがあるだけでなく、業種によっては法令違反のリスクが生じます。
⑥想定されるトラブルをフォローできているかチェックする
上記のとおり、契約書にはリスク回避・転嫁・シェアの機能が期待されます。
想定される大きなトラブルやリスクに対する対処が見落とされていないか注意しなければなりません。
⑦自社の目的や取引の実態に即した内容かチェックする
取引の目的・実態と契約書内容が乖離していると、取引のフローに不明確になる、トラブルが発生した際に対処できないといった問題が生じかねません。
(2)チェックリスト
上記(1)でレビュー時に共通のチェック視点について扱いましたが、実務上、チェックリストを手元に作っておくと実際の業務のとき便利です。
簡易なものですが、末尾の参考書籍を参考に下記のチェックリストを手元においております。
(リスト)
①契約の目的、重要さ
②当事者
③契約内容
【契約類型】
・民法の典型契約のどれに近いか、タイトルと契約類型に矛盾がないか
・「委託」とあるが請負、準委任どちらに近いか
【契約の本旨】
・対象物やサービスの特定は十分か
・対価は明確か
・履行義務の内容や支払のトリガー、支払プロセスは明確か
・契約期間は適切か
【紛争回避又は紛争時対応】
・対象物やサービスに瑕疵が合った場合の対応
・誰が誰に対して権利義務を負うかや契約終了時の権利義務関係は明確か(特に成果物がある場合等に重要)
・想定されるトラブルとそれに関するリスクについてカバーされているか
【その他】
・それまでの交渉結果がきちんと反映されているか
④形式面
・誤字脱字
・甲乙が逆等の当事者の逆転や記載ミスがないか
・引用に間違えがないか
主たる参考文献
LegalForce Column「契約書のリーガルチェックの基礎と注意点を紹介!【2022年最新版】」
https://legalforce-cloud.com/media/about-legalcheck.html
コメント