【学び方】M&Aの戦略参謀になるにはどうしたらよいか

M&A

会社からM&Aを今後推進・拡張していくことを検討しているので、法務からもその検討に参加するように言われましたがどうすればよいでしょうか?

法務担当者としてM&Aに関する法的なスキームや手続きについて知見を有することがまず重要となります。ただ、会社は今後のM&A推進という戦略の実現のために参加を求めているので、M&A戦略についても理解しておくことが必要になるかと思います。本記事では前半でM&A戦略の内容を扱い、後半でM&Aの戦略参謀となるためのポイントを扱います。

M&A戦略とは

M&A戦略とは「経営戦略を実現するためどのようにM&Aを活用するかを定めた基本方針」のことをいいます。

M&Aの成功確率は30~50%程度といわれており、これは逆に見れば半分以上のM&Aは失敗しているということになります。M&Aは経営戦略実現の手段であるところ、M&Aを失敗にさせないように戦略的に行うことが重要になります。

M&A戦略の3つの要素

経営戦略との整合性

M&Aは経営戦略を実現するための手段です。そのため、M&A戦略の前提として経営戦略に整合するものでなければなりません。

M&Aは、将来の事業ポートフォリオをどうするかという全社戦略を前提に特定の事業について
①どのケイパビリティを強化するのか
②どの商品・サービスを強化するのか
③どの市場を強化するのか
という事業戦略における参入手段です。

そのため、M&A戦略は、経営戦略全体の中で事業戦略上の参入戦略として適切なものでなければなりません。

ターゲット企業の明確な選定基準

M&Aの失敗要因としてそもそも買収すべき会社でなかったということや買収後のPMIがうまくいかなかったということが挙げられます。

そのため、自社にとって当該企業がM&Aの対象として適切かを慎重に見極める必要があり、ターゲット企業の明確な選定基準を設けることが重要となります。
選定基準の設定においては、以下の2つの視点から検討するようにしましょう。
①自社に競争優位性がある強み(キー・ケイパビリティ)が存在するか。
②M&Aで獲得しようとする経営資源が自社の強みを活かせるものであるか。

M&A遂行のためのマネジメントルール

仮にターゲット企業の選定が成功していても、過剰な高値掴みをしたりクロージング後の被買収企業のマネジメントやガバナンスに失敗すれば、そのM&Aは最終的には失敗に終わるでしょう。そのため、M&A戦略においては投資の意思決定や買収後のモニタリングをどのようにまたどのような基準で行うか、M&A遂行のためのマネジメントルールを明確化していくことが肝要になります。

M&Aの戦略参謀になるためのポイント

上記でM&A戦略の概要について述べましたが、では法務担当がM&A戦略を押さえ戦略参謀になるためにどうするのがよいでしょうか。IGPIの宮下和昌弁護士が動画で「法務担当者がM&Aの“戦略参謀”となるための5つのポイント」を論じてくださっているのでその概要を下記いたします。

https://www.youtube.com/watch?v=ESU1e5zEQSM

プロセスを知り、シナリオを描く

プロセスを知りシナリオを描ける法務担当者の存在は、M&A案件を扱う部署責任者や具体的なM&A案件のプロジェクトマネージャー等のM&A案件のリーダーにとっての地図とコンパスとなります。

プロセス及びシナリオを円滑に描くためには、全体プロセスが空で描けるくらい頭に入っており、各プロセスにおいて特に注意しておくべきポイントやかかる工数や時間についておおよその感覚を持っておくことが重要になります。特に下記の点を意識しておくとよいでしょう。

  • 基本条件・基本合意及び最終契約のポイントを空で言えるくらいきちんと押さえておく
  • DDをどういう視点で設定するか目的や状況に応じた基本パターンとおおよその工数を抑えておく
  • 将来発生しうる論点及びそれへの基本的な対応パターンを抑えておく

プロマネ・リーダーから信頼されるパートナーになる

プロマネ等のリーダーからの信頼がなければどんなに当該領域に精通していても戦略参謀ではなくコメンテーターに留まってしまいます。

宮下先生は信頼を得るためのポイントとして、リーダーが開催するキックオフミーティングについて事前準備をしたうえで参加することを強調されています。

リスクを指摘するにとどまらずコントロールする

法務の重要な役割はリスクマネジメントでありますし、M&Aは半分以上が失敗するようなそもそもがリスキーなチャレンジになります。そのため、リスクの発見して指摘して終了するのではなく、当該リスクをコントロールできないか、回避手段の検討をすることが重要です。

検討し、回避できない場合は、当該リスクと利益の比較衡量により、M&Aを実行するか否かを意思決定することになります。なお、リスク検討の際は、リスクの量だけでなくリスクの質についても着目しなければなりません。

タイムマネジメント

M&Aは長引けば長引くほどブレイクしやすくなってしまうので、時間との勝負にもなります。特にDDは相手から協力いただける期間が限られるためスケジューリングが超重要になります。スケジューリングのコツは、大きなリスクから優先的に把握していくことです。

また、外部専門家にやっていただき報告書を受領することが多いかと思います。上記(3)と関連しますが、報告書ではリスクの指摘だけでなく大小と回避策までも記載を必須としておきましょう。

社内外の専門家と適切な論点整理ができる

M&Aは、総合格闘技に喩えられるように、法務だけでなく、事業分析や会計・ファイナンス、税金等様々な領域が絡んでくるものになります。そのため、様々な分野について社内外の専門家が関与し進めていかなければならず、彼/彼女らとうまく連携して論点整理ができることが戦略参謀となる上で必要になります。

いわゆるπ字型スキルを身に着けようという話になりますが、宮下先生は動画の中で、税務に弱い法務が多いので税務について学ぶのがコスパがよいと推奨されています。

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